2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

規制に対する考え

まぁぶっちゃけたことを言うと、コーヒー愛好家という立場からは「高用量カフェイン添加の飲食物」が乱立するのは「迷惑」というか……カフェインによる急性中毒の事例が増えたりして、実際に危険を招く可能性があるのみならず、カフェインそのものや、問題な…

「カフェインを添加した飲食物」だけが対象になるわけ

ひょっとしたら、「添加した飲食物だけが対象ってことは…やっぱり、天然由来の方が安全なんだね」と思う人もいるかもしれますが、それは「まるっきり見当外れの勘違い」です。元から天然物に含有されてるものだろうが、そこから抽出して添加物に使うものだろ…

各国のカフェイン規制方針

さて、既に知っている方も多いと思いますが、近年、カフェインの安全性に対する関心が世界的に高まってます。その議論の中心は妊婦に対する安全性なのですが、それ以外にも子供に対する影響などについても各国で議論が行われている状況です。 で、実は日本で…

カフェイン規制に対する世界の動き

先日のNHK「極める」で、「コーヒーでダイエット効果?」と称して、カフェインが運動時のエネルギー消費を亢進させる効果について言及されたのを受けて、「ダイエットの効果を一切保証するものではないよ」とツッコミを入れた(http://d.hatena.ne.jp/coffee…

コーヒーと心疾患リスクのパラドックス

#畝山先生の「食品安全情報blog」経由。 http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20100622#p6>カフェインのリスクとベネフィットについては多くの矛盾した知見がある。重箱の隅だけど、この部分は矛盾というより、文脈上「相反した知見」程度かな。カフェインには健…

インド・モンスーン

「品種」とは少し違うのだが、インドには「モンスーンド・コーヒー Monsooned Coffee」あるいは「インド・モンスーン」と呼ばれる独特のコーヒーがある。これはインドからヨーロッパに運ばれていた当時の、伝統的な製法に従うものとされている。「モンスーン…

さび病耐性品種の発展

オールドチックに代わって、1870年代からインドで栽培されたのが「クールグ Coorg」と呼ばれる品種である。おそらくはオールドチックに由来すると思われるアラビカ種で、比較的標高の低い、クールグ地区の農園で見いだされたことから、この名がある。クール…

ババ・ブダンのコーヒー

さて、このババ・ブダンが伝えたとされるコーヒーは「オールドチック Old Chiks」と呼ばれ、栽培品種に相当するものである。"Chiks"というのは、聖堂があるチッカマガルール (Chickmagalore, Chikkamagaluru, Chikmagalore, Chikmagalur) という地区名から来…

ババ・ブダンによる伝播

時は流れて17世紀。インド南部は、ヒンドゥー王朝であるヴィジャヤナガル王国(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%A4%E3%83%8A%E3%82%AC%E3%83%AB%E6%9C%9D)の支配下にあったが、1649年にスンニ派イスラム王朝であ…

「民衆のヒーロー」ダダ・ハヤート

ババブダンギリ聖堂は、イスラーム初期に、インドに初めてイスラム教を広めたとされる「ダダ・ハヤート Dada Hayat」を奉った場所であった。ダダ・ハヤートは本名、アブドゥル・アジーズ・マッキ(Abdul Aziz Makki、Hazrat Sheikh Abdul Azeez Mecci)。メ…

インドにおけるコーヒーの歴史

コーヒーの栽培はイエメンにおいて始まり、現在では世界中に広まっている。その栽培の伝播においては、オランダやフランスをはじめヨーロッパの国々が大きく貢献したことは良く知られている。しかしその一方、「いわゆるヨーロッパ人」以外の手によって広ま…

6/21 NHK「極める」第4回

本日(22:25-22:55)、NHK「極める」石井正則の珈琲学、第4回が放送されます。今回が最終回ということで、石井さんがこれまでの集大成として「自分のコーヒー」作りにチャレンジする、という内容のようです。 それから見逃した方に朗報。6/26日(土) 午後二…

「変わり種」な品種(3)

#とりあえず、今回で Ukers "All About Coffee"に(当時の分類では変種として)名前の出てるものは網羅できたはず。 アングスティフォリア 「アングスティフォリア angustifolia」とは「狭い(angust-) 葉(folia)」を意味し、その名の通り、通常のアラビ…

6/14 NHK「極める」:さらに勝手にフォロー。「コーヒーとダイエット」

なんか、番組の影響で「コーヒー(カフェイン)にダイエット効果」みたいな考え方が再燃してるみたいですが…… 先に結論から。 「コーヒーで確実にダイエットできる!」というなら夢のような話だけど……まぁダイエットって、皆が皆、そう簡単にできるようなも…

「極める 石井正則の珈琲学」第3回「コーヒーと健康」を勝手にフォローする。

野田先生の述べた「摂取に注意が必要な人」のうち、「妊婦」について問題になるのは、あくまで「多めのカフェイン摂取」で、適量の摂取であれば、摂取しない場合と流産リスクには差がない、というのが一般的な見解です。ここで言う「多め」というのは、研究…

6/14 NHK「極める」第3回

本日(10:25〜10:55)はNHK「極める」の第3回です。3回目のテーマは「コーヒーと健康」。テキストによると、野田先生による総合的な解説と、糖尿病発症リスク低下についての解説。カフェインとエネルギー代謝の関係について、です。

東アフリカの品種

初期(〜19世紀末) 最初に東アフリカに広まったコーヒーは「フレンチミッション French Mission」と呼ばれる。 フレンチミッションの起源は、フランス人宣教師(=French Mission)がタンザニアに持ち込んだ、レユニオン島由来のブルボンと、イエメン由来のモ…

ケニアのコーヒー栽培

ドイツ領からイギリス領へと変遷し、なおかつ地域的な違いが大きいタンザニアに比べると、ケニアにおけるコーヒー栽培の流れは比較的シンプルである。 フランス宣教師が1877年にタンザニアの港町、バガモヨに伝えたコーヒーノキは、タンザニア各地へ広まって…

東アフリカのコーヒーの歴史と品種(2)

コーヒーの品種開発で、最も目ざましい仕事をしたのはブラジルだろう。しかし、もちろんそれ以外の国でも様々な取り組みがなされてきた。その中でも、ケニアは特徴的な品種を輩出してきた国の一つだ。

イギリス領タンガニイカから現在へ

タンガニイカを植民地化したイギリスは、ドイツ領東アフリカ時代のコーヒー栽培を引き継ぎ、ブコバとモシ地方での栽培を続けていこうとした。1919年から1925年の間に、イギリスはブコバに1000万本ものコーヒーの苗木を移植した。さらに、ブコバ地方の伝統的…

「ドイツ領東アフリカ」時代のタンザニア

ドイツ領東アフリカでは、植民地政策としてコーヒー栽培に本格的に着手しようとした。当初、東ウサンバラでのコーヒー栽培を行ったが、雨が多すぎる気候のため収穫量が少なく、また現地人の労働に対する意識がドイツ人の想定したものとかけ離れていたことも…

東アフリカへの導入

東アフリカの本格的な探索は、バートン卿とスピークの時代、1800年代中頃になって始まったものである。それ以前は、東アフリカの海岸部のみがヨーロッパ人の知りうる「東アフリカ」であった。 はじめて東アフリカに到達したヨーロッパ人は、かのポルトガル人…

東アフリカのコーヒーの歴史と品種(1)

#「変わり種の品種」はお休み。 #今回は東アフリカ編その1として、東アフリカへの導入と、タンザニアコーヒー「キリマンジャロ」の歴史のお話。 現在、東アフリカ*1のコーヒー産地としては、ケニアやタンザニアが最も有名である。この地域には、元々アラ…

6/7 NHK「極める」第2回

明日(10:25〜10:55)はNHK「極める」の第2回です。2回目のテーマは「喫茶店」。テキストによると、17世紀ロンドンのコーヒーハウスから、現在の東京のカフェまでをカバーした内容のようです。個人的には、こういった文化史については実はあまり詳しくないも…

「変わり種」な品種(2)

ゴイアバ C. arabica 'Goiaba' 「ゴイアバ」と聞いても、何のことだかピンとこないかもしれないが、実はポルトガル語で「グアバ」のことを指す言葉だ。その名が示す通り、ゴイアバ(goiaba)と呼ばれる品種は、実の形がグアバを思わせることから名付けられた…

「変わり種」な品種

#適当にシリーズで続くかもこれまで述べた以外にも、コーヒーノキの栽培品種のいくつかには、非常に変わった特徴を持つものがある。その特徴のため古くから知られてものも多いのだが、商業栽培においては「都合の良い特徴」のものだけが選ばれ大規模に栽培…

セラ C. arabica 'Cera'

サンパウロ州の異なる二つの地域で発見され、現地で「セラ」とか「卵黄コーヒー」(cafe gema) とか呼ばれていた栽培品種である。セラ (Cera) とは「蝋、ワックス」を意味する。この変異種は、大きさ、葉、果実の色などティピカと変わらない外見なのだが、生…

ムルタとナナ C. arabica 'Murta', 'Nana'

ムルタとナナは、いずれも木全体や葉が小さくなる矮性の、ブルボンの変異種である。ムルタ "Murta"は、ポルトガル語で「ギンバイカ」という植物を指す言葉である。日本では馴染みが少ないものだと思うが、ヨーロッパでは「ミルテ」あるいは「マートル myrtle…

コーヒー学を進展させた栽培品種

ブラジルのカンピナス農業試験場(IAC)で、1930年代から行われた研究では、非常にさまざまな栽培品種の解析が行われた。この中には、カトゥーラやムンドノーボなどのように、実際に商業レベルでの栽培に至った栽培品種もあれば、そうでないものもある。ただ、…