2010-01-01から1年間の記事一覧

カフェを100年、続けるために

カフェを100年、続けるために作者: 田口護出版社/メーカー: 旭屋出版発売日: 2010/12/01メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 71回この商品を含むブログ (7件) を見るカフェバッハの田口護氏の最新刊です。テーマは、ずばり「カフェ/コーヒー屋/自家焙煎店…

コーヒー栽培の基本 アラビカ編

コーヒー栽培の基本 アラビカ編 [DVD]出版社/メーカー: ICE発売日: 2010/10/01メディア: DVD購入: 5人 クリック: 67回この商品を含むブログ (1件) を見る「コーヒーハンター」として知られる川島氏が監修したDVDです。当初、制作元のICEからの通販のみだった…

「マンデリン」の変遷

コーヒーの一大ブランドである「マンデリン」は、1841年に南タパヌリで強制栽培制度が導入されたときに生まれたものだと考えられている。これらのマンダイリン、アンコーラ・バタック族の土地では、後にミナンカバウ地方で行われた強制搬入制度よりも、むし…

北スマトラとコーヒーの歴史

スマトラ島北部のコーヒー栽培は、このミナンカバウから始まり、マンダイリン、アンコーラ、トバ地区へと徐々に北上し、最終的にはアチェ州中部のガヨ地区にまで広まった。これらの地域を理解するため、ここで少し、東南アジアの歴史に照らしながら紐解いて…

"All About Coffee"に見る、スマトラ産コーヒー

マンデリンは、古い文献でしばしば「最高級コーヒーの一つ」と記載されている。Ukersの"All about coffee"の初版(1922年)でもマンデリンについて、 "The best coffee in the world"; also the highest priced. と記している。このことは、今でも国内の評判…

マンダイリン・バタック族

このエピソード自体はともかくとして、マンデリンの語源が北スマトラの部族の名前から来ていることは確かだ。この部族は、北スマトラの内陸部に古くから暮らしている、バタック族(バタク族、Batak、Battak、Battas)と呼ばれる部族の、支族の一つであり、マ…

とあるエピソード

この部族の名前がコーヒーの名前になった経緯については、以下のようなエピソードが世界的に知られている。 第二次世界大戦の頃、インドネシアに駐留していた日本軍の兵隊の一人が、現地のコーヒーショップに立ち寄った。そのあまりの美味しさに、彼は思わず…

マンデリン:北スマトラのコーヒーの歴史

コーヒーの銘柄は数多くあるが、その中でも「マンデリン」は日本でのファンも多く、有名なものの一つだろう。しかし、その来歴を語ろうとすると、かなり込み入っている。 「マンデリン Mandheling」はスマトラ島北部で産生されるコーヒーに付けられた銘柄名…

「Giling Basah」:スマトラ式精製法

インドネシアのコーヒーを語る上では、品種もさることながら、その特殊な精製法も重要である。ジャワ島でロブスタにも水洗式精製を用いていることは上述したが、それ以外の島、スマトラ島やスラウェシ島などでは、世界的に主流な水洗式とも乾式とも異なる、…

現在のインドネシアの品種

インドネシアでは、現在も多くの種類の耐さび病品種が栽培されており、いわば「耐さび病品種の見本市」みたいな感じだ。これらの栽培品種は、大まかには5つに大別することが可能だ。 ロブスタ アラビカ ハイブリッド Sライン(アラビカxリベリカ交配種由来)…

ブラジルの「スマトラ」

紛らわしい話なのだが、コーヒーの品種を語るときに、上に挙げたスマトラ島の品種を「スマトラ」と呼ぶのは間違いのもとだ。「スマトラ」と、上記の「クラシック・スマトラ」は、厳密には異なる…というより、「スマトラ」はスマトラ島で栽培されている品種で…

クラシックスマトラ

インドネシア各地では元々ティピカが栽培されていたが、19世紀末のさび病の流行によって、また20世紀初めからロブスタを含む耐さび病品種への転換が進んだことで、それらの古い品種の多くは失われてしまった……と、そう考えられていた。しかし後になって、北…

インドネシアコーヒーの歴史と品種(3)

#3回くらいにまとめるつもりでしたが長くなったので、北スマトラの「マンデリン」については、また後日。 #今回は、新旧スマトラ対決?と、現在の栽培品種のまとめ。

他産地からの移入種

上述したインドネシアで誕生した耐さび病品種は現在はすでに下火である。現在の栽培品種のほとんどは、起源を辿ればインドやポルトガルなど、他の国由来の耐さび病品種に辿り着くものが主流となっている。他の国々では、これらの耐さび病品種は、さらに戻し…

インドネシア・ハイブリッドの誕生

さび病への対策やその他の優良品種の開発のため、アラビカとほかのCoffea属植物との人工交配は、比較的初期からインドネシアで、特にジャワ島の農園経営者たちによって行われていた。しかし彼らの試みは思ったように上手くはいかなかった。後に判明したよう…

インドネシアコーヒーの歴史と品種(2)

#前回からの続き。耐さび病品種の新たな展開 悪名高い「強制栽培制度」によって多大な利益をあげたオランダであったが、やがて植民地の惨状が知れ渡る*1とオランダ国内からの批判が噴出した。この反対世論を受け、強制栽培制度は1870年頃から順次廃止される…

「三原種」の揃い踏み

その後、インドネシアのコーヒー栽培は大きな災厄に見舞われる。19世紀後半に発生したコーヒーさび病の蔓延*1である。ケニアで1861年に発生したさび病はスリランカ(1868)、インド(1869)に到達し、それぞれの国のコーヒー栽培を数年のうちにほぼ壊滅させた。…

インドネシアへの伝播

#アラビカ種ティピカの年譜 (1670年?ババブダンがモカ港からインド西部にイエメンのコーヒーを持ち帰る。後のオールドチック) 1690年 ジャワ島のバタヴィア(現在のジャカルタ)に、イエメンから来たコーヒーノキが植えられる? 1696年 インドのマラバールか…

オランダによるインドネシアのコーヒー栽培

インドネシアでコーヒーの栽培がさかんになったのは、ひとえにオランダ、さらに言えばオランダ東インド会社(以下、VOC*1)の「功績」である……それを単純に「功績」と言っていいのであればだが。 17世紀、オランダは東インド地域での香辛料貿易の覇権をポル…

インドネシアコーヒーの歴史と品種(1)

#3回くらい引っ張る予定。 インドネシア、特にジャワ島は、しばしば「イエメンに次いでコーヒー栽培が行われた、古い産地である」と言われる。本当に「イエメンの次に栽培された」と言っていいかというと、ちょっと微妙な点はある*1のだが、まぁ「商業規模…

EFSAによる食品のヒト健康リスクベネフィット解析ガイドライン

畝山先生経由 http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20100713#p4 「ようやく、こういう時代が来たか…」としみじみ思う。そこから、さらに進んで、(1)トータルリスクの評価、(2)摂取する者に応じた「場合分け」のリスク評価、(3)摂取量の上限の目安、といったところ…

規制に対する考え

まぁぶっちゃけたことを言うと、コーヒー愛好家という立場からは「高用量カフェイン添加の飲食物」が乱立するのは「迷惑」というか……カフェインによる急性中毒の事例が増えたりして、実際に危険を招く可能性があるのみならず、カフェインそのものや、問題な…

「カフェインを添加した飲食物」だけが対象になるわけ

ひょっとしたら、「添加した飲食物だけが対象ってことは…やっぱり、天然由来の方が安全なんだね」と思う人もいるかもしれますが、それは「まるっきり見当外れの勘違い」です。元から天然物に含有されてるものだろうが、そこから抽出して添加物に使うものだろ…

各国のカフェイン規制方針

さて、既に知っている方も多いと思いますが、近年、カフェインの安全性に対する関心が世界的に高まってます。その議論の中心は妊婦に対する安全性なのですが、それ以外にも子供に対する影響などについても各国で議論が行われている状況です。 で、実は日本で…

カフェイン規制に対する世界の動き

先日のNHK「極める」で、「コーヒーでダイエット効果?」と称して、カフェインが運動時のエネルギー消費を亢進させる効果について言及されたのを受けて、「ダイエットの効果を一切保証するものではないよ」とツッコミを入れた(http://d.hatena.ne.jp/coffee…

コーヒーと心疾患リスクのパラドックス

#畝山先生の「食品安全情報blog」経由。 http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20100622#p6>カフェインのリスクとベネフィットについては多くの矛盾した知見がある。重箱の隅だけど、この部分は矛盾というより、文脈上「相反した知見」程度かな。カフェインには健…

インド・モンスーン

「品種」とは少し違うのだが、インドには「モンスーンド・コーヒー Monsooned Coffee」あるいは「インド・モンスーン」と呼ばれる独特のコーヒーがある。これはインドからヨーロッパに運ばれていた当時の、伝統的な製法に従うものとされている。「モンスーン…

さび病耐性品種の発展

オールドチックに代わって、1870年代からインドで栽培されたのが「クールグ Coorg」と呼ばれる品種である。おそらくはオールドチックに由来すると思われるアラビカ種で、比較的標高の低い、クールグ地区の農園で見いだされたことから、この名がある。クール…

ババ・ブダンのコーヒー

さて、このババ・ブダンが伝えたとされるコーヒーは「オールドチック Old Chiks」と呼ばれ、栽培品種に相当するものである。"Chiks"というのは、聖堂があるチッカマガルール (Chickmagalore, Chikkamagaluru, Chikmagalore, Chikmagalur) という地区名から来…

ババ・ブダンによる伝播

時は流れて17世紀。インド南部は、ヒンドゥー王朝であるヴィジャヤナガル王国(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%A4%E3%83%8A%E3%82%AC%E3%83%AB%E6%9C%9D)の支配下にあったが、1649年にスンニ派イスラム王朝であ…