2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

怪しげな仮説

さて例のごとく、今回も「怪しげな仮説」を唱えてみよう。 11世紀に書かれたイブン・スィーナー『医学典範』には薬としての「ブンクム」の記載があり、その性状とともに「イエメンからもたらされる」と書かれている。しかし以前考察したように、この薬用とし…

ザブハーニーと「ブンクム」のつながり

アブドゥル=カーディルやサハーウィーの記述を見る限り、ザブハーニーは法学や神学に関する学識が豊富だったことは確かだが、彼がイスラム医学に通じていたことを示す記述はない。にも関わらず、ザブハーニーは自分の病気を自己診断して、それを治すために…

『医学典範』における「ブンクム」

ここでもう一度「ブンクム」の記述を見てみよう。 その性状は第一に、熱にして乾である。他の者によれば第一に冷である。それは四肢を強化し、肌を清め、肌の下の湿気を乾かす、そして全身に素晴らしい香りを与える イブン・スィーナーは、ブンクムの性状を…

『医学典範』の理論と疥癬

イブン・スィーナーの『医学典範』でも疥癬についていくつか触れられているものの、彼の医学理論は基本的にヒポクラテスやガレノスの四体液説を継承、発展させたものであり、アッ=タバリによるヒゼンダニの発見については触れていない。 まずは『医学典範』…

「薬としてのコーヒー」再び

ザブハーニーがアデンに戻ったときに罹った病気が何だったのかについての明確な記録はなく、彼がどういう経緯で、どういう効果を期待して飲んだものなのかは直接的には判らない。一方、間接的な判断材料になるが、この当時までに、コーヒーが病気を治す「薬…

はじまりの物語 (14)

#ゲマルディンことジャマールッディーン・アブー・アブドゥッラー・ムハンマド・イブン・サイード・アッ=ザブハーニーの謎に迫る その3 前回からの続き。今回は、ザブハーニーとコーヒーの「再会」を考える。 ザブハーニーはアデンから「アジャムの地(バ…