「極める 石井正則の珈琲学」第3回「コーヒーと健康」を勝手にフォローする。

野田先生の述べた「摂取に注意が必要な人」のうち、「妊婦」について問題になるのは、あくまで「多めのカフェイン摂取」で、適量の摂取であれば、摂取しない場合と流産リスクには差がない、というのが一般的な見解です。

ここで言う「多め」というのは、研究者によって数値にばらつきはありますが、概ね「カフェイン200-300mg/日」以上程度とされてます。

もう少し詳しい解説は、百珈苑の本体の方(http://sites.google.com/site/coffeetambe/coffeescience/medicalscience/maternalrisk)で、以前まとめた内容を公開してますので、よければ参考にして下さい。


それから腎臓疾患の場合ですが、これは慢性腎不全などで医者からカリウム制限(野菜をよく水煮してカリウムを抜くなど)を指示されている人などが対象になると考えていただければ、と。腎臓に疾患がある人の中でも、人工透析を行っているなど、比較的重度の人がその主な対象です(日本だと慢性腎不全の患者数が10万人強と言われてるので…まぁ1000人に1人くらい?)


コーヒーは確かにカリウムを含んでますし、その量は「他の嗜好飲料と比べると」そこそこ高いです。なので、意外に盲点なのかもしれません。おそらく野田先生が指摘したのは、その「盲点」を見逃さないで欲しい、ということなんでしょう*1。ただまぁ、例えばPubMedなどで「coffee "renal failure"」などをキーワードに検索しても、特別にそういった注意を呼びかけてる論文が出てくるわけではないです。…まぁこの辺りが、バランス感覚的に「わざわざあそこまで強調して言う必要があったのかなぁ、というところ」


ちなみにコーヒーのカリウム量については、五訂食品成分表(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802/002.htm)の記載では、抽出液で65mg/100g、インスタントコーヒー粉末で3600mg/100gです。他の文献でも、まぁ大差ない感じ。ちなみに50%果汁入りのみかんジュースが63mg/100g、パイナップルジュースが95mg/100g、リンゴジュースが55mg/100g、という辺り。なので、まぁ概ね「50%果汁入りジュース程度」と考えればよろしいかと。

数字だけで見るとインスタントコーヒーの含量がやたら高く見えますが、「標準的な作り方」では1杯あたり1.5g/140mlで作るため、100ml換算すると大体40mg/100gになります。


あとまぁ、コーヒーが悪く作用する人としては、患者数では恐らくパニック症候群の方が多いと思われます。推定患者数が国内で100万人程度と言われてます。パニック症候群、あるいはパニック発作を伴うタイプのうつ病うつ病にもいろいろなタイプがあり、このタイプにはあたらないケースも多いですが)の場合、カフェインの摂取によってパニック発作を起こすことがありますので、コーヒーに限らずカフェインの摂取を控えた方がいい人に該当します。

#この辺りは、テレビで細かく説明するのが難しい*2ことから、野田先生が説明を割愛したのかなぁ、と思います。

*1:まぁ御自身の専門に近いところ、というのも大きいんでしょうが。

*2:おそらく「パニック障害」という病気に対する、一般の認知度自体が低いと思われますので。