カフェイン規制に対する世界の動き

先日のNHK「極める」で、「コーヒーでダイエット効果?」と称して、カフェインが運動時のエネルギー消費を亢進させる効果について言及されたのを受けて、「ダイエットの効果を一切保証するものではないよ」とツッコミを入れた(http://d.hatena.ne.jp/coffee_tambe/20100615)わけですが、もう一本、予防線を張る意味もかねて、補足を。


(既に以前から存在してるんだけど)「カフェインにダイエット効果」とかを謳う商品が、今後また増えてくる可能性があろうかと思うわけですが、ここで予め釘をさしておきたいのは「飲食物へのカフェインの添加」です。


我々が日常、口にしうるもので、カフェインを含むものは3種類に大別できます。

  1. コーヒーや茶、チョコレートのように元からカフェインを含む飲食物
  2. 医薬品
  3. カフェインを添加した飲食物(コーラなどの清涼飲料水やエナジードリンクなど)


(1)については、まぁ説明はいらないと思いますが、基本的にいわゆる「天然の」植物由来の素材を原料とした加工食品にあたります。缶コーヒーやインスタントコーヒーなどのように、工業レベルで製造されるものもありますが、いわゆる自家焙煎店などで作られる焙煎豆、喫茶店で出されるコーヒーなども、この範疇に当たります。


(2)の医薬品については、薬事法/薬局方の範囲となります。特定の薬効を謳うことが許容されますが、成分量の表示が必要になるほか、販売上の制限も大きくなります。特に、高濃度のカフェインを含有する製品等については、医薬品としては「劇薬」(「劇物」とは全くの別物なので、混同に注意)の扱いになります。


(3)飲食物では、カフェイン(抽出物)を食品添加物として使用することが認められています。食品添加物の中では「既存添加物」(http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/0/c3f4c591005986d949256fa900252700?OpenDocument)という分類がなされており、これは以前から添加物として使用されてきた経緯から、今のところ安全性には問題がない、と考えられているものに相当します*1


ただし、(3)飲食物にカフェインを添加する場合には条件があります。苦味料として使う分には構わないのですが、カフェインは、食品衛生法上、「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syokuten/040601/betu.html のリストに含められているため、食品について、医薬品的な効果を宣伝的に用いることは許されていません。


(2)と(3)の違いについて、例えば下記の商品の説明をそれぞれのサイトで比較してみるとおもしろいでしょう。

このうち、エスタロンモカ内服液は(2)医薬品で、はっきりと「ねむけを防止する」と書かれており、カフェイン量まで記載があります。これに対して眠眠打破メガシャキには具体的な「効果」の記載はなく「お仕事や受験勉強に」「仕事や勉強、運転をサポート」といった表記しかありませんし、カフェインの量も書かれてはいません。


「シャキッとする」とか「受験勉強のお供に」程度の表現については、「医薬品」としての効果には当たらないだろうという判断から許容されてるようです。が、これが例えば「ねむけの防止」とかになると医薬品的効能になるので駄目だというわけです。一般的な食品ではこのように、効能に当たるような宣伝文句を利用することは許容されませんが、いわゆる「トクホ」、「特定保健食品」としての認定を受けたものでは、一部の作用について可能になります。ただしトクホは個別の「製品」ごとに認定される仕組みなので、例えば「ヘルシア・コーヒー」と同じような(クロロゲン酸増量/ヒドロキシヒドロキノン減量した)商品を他社が作ったとしても、それが自動認定されるわけではないです。また、今のところ、カフェイン単独の作用でトクホ認定されているものはありません。


ところで、実は「食品添加物」として用いる場合のカフェインの上限量には、今のところ日本には明確な規定がありません。その気になれば、カフェインを大増量した「缶コーヒー」とかを作っても、すぐに法令違反になるというわけではないです。とはいえ、もちろん、それ飲んで具合が悪くなった人が続出するようなら「製造者責任」は免れないわけで、これまでのところ、添加するにしてもあまり大量にならないよう、割りかし「節度ある利用」がされていた、というのが国内の現状です。

……しかし、ここに「ダイエット業者」が絡んでくると、今後どうなるかわからないというか……そもそもダイエット業界界隈にはかなりいかがわしい連中も多いので、「節度ある利用」もへったくれもなく、何しでかすか判らんぞ、という点を、非常に危惧してるわけです。

*1:この他「生コーヒー豆抽出物」が酸化防止剤として既存添加物のリストに入ってます。また天然香料基元物質として「コーヒー」が含まれています。