各国のカフェイン規制方針

さて、既に知っている方も多いと思いますが、近年、カフェインの安全性に対する関心が世界的に高まってます。その議論の中心は妊婦に対する安全性なのですが、それ以外にも子供に対する影響などについても各国で議論が行われている状況です。


で、実は日本でも去年あたりから、食品安全委員会で議論の動きが出て来てます。「平成21年度食品安全委員会が自ら食品健康影響評価を行う案件候補」にリストアップされ、実際に食品健康影響評価を行うかどうかが昨年末に議論されました。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20091217ki1 資料4)


結局のところ、評価困難な部分が予想されることとこれまでの使用実績を考慮し、実際の「自ら評価」案件にはならなかったのですが(http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20100609ki1 資料5-5)、「情報収集と(特に妊婦に対する安全)情報提供」という形で、継続的に海外からの情報収集が続けられています(いわばペンディング状態)。


で、他国の状況はどうかというと(上述の資料4などに、よくまとまってますが)

  • イギリス食品基準庁:妊婦における流産リスク/低体重出産リスクの増加について述べ、妊婦の最大摂取量を300mg/日から200mg/日に制限するよう求める。
  • カナダ保健省:1日最大摂取量についてのファクトシートを公開。12歳以下:2.5mg/kg/日、妊娠適齢期女性:300mg/日、健康な成人:400〜450mg/日、を推奨最大摂取量とした。カフェイン含量表示について検討中。
  • フィンランド食品安全局:高カフェイン含有飲料(>150mg/L)、菓子、チョコレート、健康食品等に警告表示(妊婦、子供、カフェイン過敏者を対象)を義務化。
  • 台湾行政院衛生署:カフェインを含む容器入り飲料に含量表示を義務づけ。カフェイン添加量の上限規定(終濃度320ppm)あり。
  • スイス連邦保険局:妊娠中/授乳中の人を対象にした一般向けのパンフレットに、「コーヒーは1日2〜3杯まで」などの記載。
  • オーストラリア/ニュージーランド(FSANZ):先日、ファクトシート(http://www.foodstandards.gov.au/scienceandeducation/factsheets/factsheets2010/caffeinejune2010.cfm)を発表した。カフェイン添加量の上限規定有り(2000年〜、オーストラリアでは添加量145mg/kg、ニュージーランドでは200mg/kg)。


また、これ以外の動きとして注目しておくべきなのが、アメリカのFDAです。カフェイン単独の場合ではないのですが、カフェインとアルコールの両方を含むエナジードリンクの安全性(ノンアルコールのものについては当面はチェック対象外)についての調査が、昨年の11月頃から本格的に始められています。


他国と日本では、規制の元になる法令などには当然違いがあるのだけど、添加物としての上限が設けられてるのが、台湾とオーストラリア/ニュージーランド。含量表示が義務づけられているのが、今のところ台湾(容器入り飲料)のみで、カナダが現在検討中、というところ。これらが比較的「厳しい」国と言えるのだけど、実は台湾は元々「食品への添加は、コーラ飲料にのみ認め、その場合の最高濃度は終濃度200ppm」としており、基準値自体は2007年に規制緩和(他の飲料へも可となり、終濃度上限も320ppmに引き上げ)された、という流れにあります。なので近年、特に規制を強める方向への動きが注目されてるのは、カナダとオーストラリア/ニュージーランドです。

ただまぁ、実際に読んでもらうと判ると思うけど、こういった国々でも、ほとんどは拘束力のない「最大摂取量の推奨」や「ファクトシートによる注意喚起」に留まってます。また含量表示や上限規制はいずれも、飲食物のうち「カフェインを添加した飲食物」だけが対象であって、コーヒーや茶など「元々カフェインを含有する(天然物由来)食品」については、対象外になっています。