6/14 NHK「極める」:さらに勝手にフォロー。「コーヒーとダイエット」

なんか、番組の影響で「コーヒー(カフェイン)にダイエット効果」みたいな考え方が再燃してるみたいですが……


先に結論から。

  • 「コーヒーで確実にダイエットできる!」というなら夢のような話だけど……まぁダイエットって、皆が皆、そう簡単にできるようなもんじゃないわけで(……ほんとは貴方もわかってるでしょ?)
  • 番組の「実験」はもちろん、現在までに得られている知見では「コーヒーにダイエット効果がある」というのは言い過ぎ(過剰宣伝)。


まぁ大抵の人は「夢を見せてくれる話」の方が好きだろうし、そういう中で「現実を突きつけられる」のは、いい気分のものじゃないよね。でもまぁ世の中には「本当のこと、真実が知りたい!」と切実に思ってる人もいるわけで。下記の解説は、そういう人に向けたものです。

  1. 今回の「実験」と称するものは、単なるテレビ用のデモに過ぎず、厳密にはそれ単独で「実験」と呼べるものではありません。
  2. だが、鈴木先生よりもずっと以前から、海外の複数の研究グループが「運動前にカフェインを摂取すると、エネルギー消費が亢進する」ことを報告しているので、「この現象自体は」概ね正しいと思われます。
  3. ただし、この現象をダイエットと結びつけて解釈するのは現時点では「言い過ぎ」。結びつけて主張してる場合は「ミスリード」なので、ひっかからないように。
    • 最低でも、そう主張したい側*1が「1. 体重や腹囲の減少」などを「2. 十分な数の被験者」を対象にした「3. 二重盲検定」で証明して、きちんとした学術論文の形で発表しないと不十分。さらに複数の別々の研究グループからの調査結果をまとめて判断しないと、本当の意味で「(貴方を含む、たくさんのヒトに対して)ダイエット効果がある」とは、主張できない。
    • 仮に効果があったとしても、次は「どの程度の効果があるか」が大事。「1g減ります!(キリッ)」と言われても……困るよねぇ。
    • 紹介された方法は「カフェインを摂った後に『運動する』」のが大事であって、カフェイン単独では駄目*2。また「カフェインを摂らずに運動する」ときよりは効果が若干上がるにしても、そもそも運動の効果の方が大きく、そこから「どれだけ」上がるかが重要。これも、カフェインの効果を主張したい側が論文書いて発表しないといけない部分(けどまぁ、これまでの代謝亢進の実験から類推される効果としては、せいぜい+10〜15%程度だと思われるのだけど)。
    • ちなみに、これまでに出てる「きちんとした実験」では、コーヒー摂取だけの影響として「アメリカでの12年間の追跡調査で、調査期間中にコーヒー摂取が増えたグループと、減ったグループを比較すると、前者の体重増加は後者よりも、平均400g少なかった」というのが発表されている。……まぁ減ってると言えば減ってるんだけど、あなたのダイエットは「12年での増加が、平均で400g減る」程度の効果でいいの?
    • このあたり(https://sites.google.com/site/coffeetambe/coffeescience/medicalscience/2011/coffeeandhealth/nutriology)も参照のこと。


まぁでも他の「ダイエット法」に比べると、(過剰に飲まないんなら)害もないし、そもそも世の中に、万人が実施可能で効果のある「ダイエット法」なんてものはないのだから、「試しにやってみる!」というんなら、それを止める義理はないです。ひょっとしたら*3やせる人もいるかもしれないし。

ただまぁ、あんまり過剰な期待はしないで、と。


あ、そうだ。ちなみにコーヒーを飲んだ後で「お通じがよくなる(/場合により、お腹が緩くなる)」人が大体3割くらいの割合でいることが判ってます(女性の方が頻度が高い)。そっちの方は、(効果が出る人限定だけど)かなり「確実な」効果だと言えるし、いわゆる「漢方便秘薬」と同様の緩下作用*4だと考えられてますので、そちらが気になる人は試してみてもいいかもしれません。

*1:立証責任は効果を主張する側にあるのが、医学分野では最低限かつ不動のルールです。でなきゃ、「この薬を飲めばがんが治る! 嘘だというんならお前が証明しろ!」なんて連中が世の中にはびこることになるので。

*2:一応、カフェイン単独では100mgの摂取で75〜110kcal、ごはんだと茶碗半分くらいのカロリー消費に相当するという報告があるにはある。けど、この結果は必ずしも他の研究グループで再現性が見られてはいない。

*3:まぁどっちかというと、運動の方の効果だろうけど

*4:小腸でなく大腸に作用するため、消化吸収の妨げにならない、マイルドな作用