2010-01-01から1年間の記事一覧

「民衆のヒーロー」ダダ・ハヤート

ババブダンギリ聖堂は、イスラーム初期に、インドに初めてイスラム教を広めたとされる「ダダ・ハヤート Dada Hayat」を奉った場所であった。ダダ・ハヤートは本名、アブドゥル・アジーズ・マッキ(Abdul Aziz Makki、Hazrat Sheikh Abdul Azeez Mecci)。メ…

インドにおけるコーヒーの歴史

コーヒーの栽培はイエメンにおいて始まり、現在では世界中に広まっている。その栽培の伝播においては、オランダやフランスをはじめヨーロッパの国々が大きく貢献したことは良く知られている。しかしその一方、「いわゆるヨーロッパ人」以外の手によって広ま…

6/21 NHK「極める」第4回

本日(22:25-22:55)、NHK「極める」石井正則の珈琲学、第4回が放送されます。今回が最終回ということで、石井さんがこれまでの集大成として「自分のコーヒー」作りにチャレンジする、という内容のようです。 それから見逃した方に朗報。6/26日(土) 午後二…

「変わり種」な品種(3)

#とりあえず、今回で Ukers "All About Coffee"に(当時の分類では変種として)名前の出てるものは網羅できたはず。 アングスティフォリア 「アングスティフォリア angustifolia」とは「狭い(angust-) 葉(folia)」を意味し、その名の通り、通常のアラビ…

6/14 NHK「極める」:さらに勝手にフォロー。「コーヒーとダイエット」

なんか、番組の影響で「コーヒー(カフェイン)にダイエット効果」みたいな考え方が再燃してるみたいですが…… 先に結論から。 「コーヒーで確実にダイエットできる!」というなら夢のような話だけど……まぁダイエットって、皆が皆、そう簡単にできるようなも…

「極める 石井正則の珈琲学」第3回「コーヒーと健康」を勝手にフォローする。

野田先生の述べた「摂取に注意が必要な人」のうち、「妊婦」について問題になるのは、あくまで「多めのカフェイン摂取」で、適量の摂取であれば、摂取しない場合と流産リスクには差がない、というのが一般的な見解です。ここで言う「多め」というのは、研究…

6/14 NHK「極める」第3回

本日(10:25〜10:55)はNHK「極める」の第3回です。3回目のテーマは「コーヒーと健康」。テキストによると、野田先生による総合的な解説と、糖尿病発症リスク低下についての解説。カフェインとエネルギー代謝の関係について、です。

東アフリカの品種

初期(〜19世紀末) 最初に東アフリカに広まったコーヒーは「フレンチミッション French Mission」と呼ばれる。 フレンチミッションの起源は、フランス人宣教師(=French Mission)がタンザニアに持ち込んだ、レユニオン島由来のブルボンと、イエメン由来のモ…

ケニアのコーヒー栽培

ドイツ領からイギリス領へと変遷し、なおかつ地域的な違いが大きいタンザニアに比べると、ケニアにおけるコーヒー栽培の流れは比較的シンプルである。 フランス宣教師が1877年にタンザニアの港町、バガモヨに伝えたコーヒーノキは、タンザニア各地へ広まって…

東アフリカのコーヒーの歴史と品種(2)

コーヒーの品種開発で、最も目ざましい仕事をしたのはブラジルだろう。しかし、もちろんそれ以外の国でも様々な取り組みがなされてきた。その中でも、ケニアは特徴的な品種を輩出してきた国の一つだ。

イギリス領タンガニイカから現在へ

タンガニイカを植民地化したイギリスは、ドイツ領東アフリカ時代のコーヒー栽培を引き継ぎ、ブコバとモシ地方での栽培を続けていこうとした。1919年から1925年の間に、イギリスはブコバに1000万本ものコーヒーの苗木を移植した。さらに、ブコバ地方の伝統的…

「ドイツ領東アフリカ」時代のタンザニア

ドイツ領東アフリカでは、植民地政策としてコーヒー栽培に本格的に着手しようとした。当初、東ウサンバラでのコーヒー栽培を行ったが、雨が多すぎる気候のため収穫量が少なく、また現地人の労働に対する意識がドイツ人の想定したものとかけ離れていたことも…

東アフリカへの導入

東アフリカの本格的な探索は、バートン卿とスピークの時代、1800年代中頃になって始まったものである。それ以前は、東アフリカの海岸部のみがヨーロッパ人の知りうる「東アフリカ」であった。 はじめて東アフリカに到達したヨーロッパ人は、かのポルトガル人…

東アフリカのコーヒーの歴史と品種(1)

#「変わり種の品種」はお休み。 #今回は東アフリカ編その1として、東アフリカへの導入と、タンザニアコーヒー「キリマンジャロ」の歴史のお話。 現在、東アフリカ*1のコーヒー産地としては、ケニアやタンザニアが最も有名である。この地域には、元々アラ…

6/7 NHK「極める」第2回

明日(10:25〜10:55)はNHK「極める」の第2回です。2回目のテーマは「喫茶店」。テキストによると、17世紀ロンドンのコーヒーハウスから、現在の東京のカフェまでをカバーした内容のようです。個人的には、こういった文化史については実はあまり詳しくないも…

「変わり種」な品種(2)

ゴイアバ C. arabica 'Goiaba' 「ゴイアバ」と聞いても、何のことだかピンとこないかもしれないが、実はポルトガル語で「グアバ」のことを指す言葉だ。その名が示す通り、ゴイアバ(goiaba)と呼ばれる品種は、実の形がグアバを思わせることから名付けられた…

「変わり種」な品種

#適当にシリーズで続くかもこれまで述べた以外にも、コーヒーノキの栽培品種のいくつかには、非常に変わった特徴を持つものがある。その特徴のため古くから知られてものも多いのだが、商業栽培においては「都合の良い特徴」のものだけが選ばれ大規模に栽培…

セラ C. arabica 'Cera'

サンパウロ州の異なる二つの地域で発見され、現地で「セラ」とか「卵黄コーヒー」(cafe gema) とか呼ばれていた栽培品種である。セラ (Cera) とは「蝋、ワックス」を意味する。この変異種は、大きさ、葉、果実の色などティピカと変わらない外見なのだが、生…

ムルタとナナ C. arabica 'Murta', 'Nana'

ムルタとナナは、いずれも木全体や葉が小さくなる矮性の、ブルボンの変異種である。ムルタ "Murta"は、ポルトガル語で「ギンバイカ」という植物を指す言葉である。日本では馴染みが少ないものだと思うが、ヨーロッパでは「ミルテ」あるいは「マートル myrtle…

コーヒー学を進展させた栽培品種

ブラジルのカンピナス農業試験場(IAC)で、1930年代から行われた研究では、非常にさまざまな栽培品種の解析が行われた。この中には、カトゥーラやムンドノーボなどのように、実際に商業レベルでの栽培に至った栽培品種もあれば、そうでないものもある。ただ、…

ティピカとブルボンの起源

昨日書いた #ティピカは「エチオピアの在来種」じゃないし、ブルボンは「ティピカの変異種」じゃない。 #ティピカとブルボンは、共に「エチオピアからイエメンに渡って栽培されていたコーヒーノキの子孫」くらいが正しい。 について。 先に結論から ティピ…

NHK「極める」

明日、5月31日から、NHK教育「極める」で「石井正則の珈琲学」がスタートします。 (毎週月曜日 午後10時25分〜10時50分、全4回)とりあえずテキストを買ってきて、健康との関係についての部分(少々、縁があったので)を眺めてみました。メインの部分は野田…

ブルボン・ポワントゥ

今年は、いくつかの伊勢丹にあるカフェ・メルカードで、五月末くらいまで店頭で飲めるようになっていたのを思い出して、京都伊勢丹まで飲みに行ってきました。 ダックワーズ(焼き菓子)一つと小さなパンフレットつきで1050円(税込み)。コーヒーはペーパー…

メモ:アントニー・ワイルド「コーヒーの真実」における仮説

アントニー・ワイルドの『コーヒーの真実』(原題:Coffee:A Dark History)は、近年書かれたコーヒー史本として一読に値する。内容もオリジナリティがあり、ある意味「異色」でもある。ただ、自分の得意とする「理系」的な部分では理解の粗さが目立つ部分も…

小休止

「モカの通った道」を見直しながら改めて考えてみてるのだけど、もう少し、当時のイエメンの事情についての知識が必要だなぁ、と痛感してます。 特に、ラスール朝とオスマントルコそしてザイド派部族の関係について、それぞれがどのようにイエメン各地に影響…

ウダインからの広がり

アッファーブかアデンかはさておくとして、コーヒーノキは港からウダインに伝わり栽培されるようになった。コーヒーは通常の作物よりも標高の高い地帯で栽培可能で、他の作物と農地が競合することもなく、しかも換金作物であった。このため、その後コーヒー…

ウダインまでの経路

次に、ウダインに至るまでにコーヒーが通った道筋についても考えてみたい。コーヒーノキは紅海を挟んだエチオピアから、どこかの港に船で運ばれて来たはずだ。紅海に面したイエメンの港として、現在は フデイダ(フデイダ州の首都) モカ アデン などの名前…

「ウダイン起源」仮説

エチオピアの「どこから」持ち出されたかは、このくらいにしておこう。次は、これがイエメンの「どこに」持ち込まれ、どう広がっていったかだ。残念ながら、イエメン栽培種の遺伝子解析は不十分であり、また栽培種の種類自体も整理がつけられないのが現状だ…

エチオピアからイエメンへ:遺伝子解析による系統解析

エチオピアは、グレート・リフト・バレー(アフリカ大地溝帯)の入り口に当たる。北東にある紅海の側から南西の高地に向かって、グレート・リフト・バレーが国土のど真ん中を分断するような形になっている。コーヒーノキはリフトバレーの西側と東側の、両側…

「モカの通った道」

現在、コーヒーノキは世界中に広まっており、その元を辿れば「ティピカ」と「ブルボン」というアラビカの二大品種に行き当たる。この二大品種はそれぞれ異なる道、つまり「ティピカの道」と「ブルボンの道」を通って世界中に広まったものだ。この「二つの道…