大きいことはいいことか?

マラゴジッペは樹高も高くなるため収穫の効率が悪くなるのに加えて、もともと実が付く数も少ない。このため、かなり収量が劣る品種だ。にも関わらず、マラゴジッペは多くの栽培家に気に入られた。その結果、それぞれの作付本数はごく少ないものの、多くの国に広まっている。


どこが、そんなに気に入られたのだろうか。まず第一は、何と言っても豆が大きいことによる「見栄えの良さ」だ。実際に栽培している者であれば、栄養が不足するなどして、発育不良になったコーヒー豆が「小さく」なることは誰でも知っていることだろう。「豆が大きい」ということは、その逆で、発育の良さをイメージさせる。もう一つには「物珍しさ」もあるに違いない。マラゴジッペの大きさは、見た者の目を惹いたであろうし、加えて、一本あたりの収量が少ないということが、ある意味、希少価値のように感じられたのかもしれない。


一方で、マラゴジッペの味に対する評価については意見が分かれている、というのが現状だろう。一般に、海外ではマラゴジッペは高品質な品種の一つと考えられているが、日本では「大味だ」と評価する人もいるようだ。

ただし恐らく、どちらの評価も、その「見た目」から来ている「イメージ」によるところが大きいのだろうと指摘しておきたい。海外では、その大きさが「見栄えがいい=良く育ってる」という、もっぱら良いイメージで捉えられているのに対して、日本では「大きい=何となく大味」という、悪いイメージも混ざってくるのではないだろうか。


少なくとも、植物学上の観点では、マラゴジッペは古いティピカ系に由来する、ブラジルで生まれた変異種の一つ、ということが言える。このことから、他の一般的なティピカなどと同程度に高品質であることは、期待できるかもしれない。……とはいえもちろん、豆の大きさが違うと、当然、焙煎時の熱の伝わり方などにも影響するため、「単なるイメージだけの問題」とか「通常サイズのものと全く違いがない」とは言い切れないのが難しいところだが。