はじまりの物語 (8)

#ターヒル朝前半 (1454-1478) の歴史。ほとんどPorter *1の抄訳。



15世紀後半から16世紀初頭にかけて、四代のスルタンによって続いたターヒル朝時代の前半 -- イスラム圏の史料にコーヒー利用の記録がはっきりと出てくるようになるのは、この時代である。ターヒル朝時代前半のイエメンは、国内の反抗的な諸部族の反乱や、ザイド派ハドラマウトなどからの侵攻など、さまざまな形の紛争がほとんど絶え間なく続いた時代であった。しかしザビードなどではラスール朝末期の混乱が収束し、イエメン国内に復興の兆しが見え始めたのもこの時代である。

  • 1454 ターヒル家の兄弟、アーミルとアリーがタイッズ、アデン、ザビードを制圧して、ターヒル朝を興す
    • 1454頃 ジャマールッディーン・ザブハーニー(=ゲマルディン)がアラビア半島でコーヒーの利用を是認(ユーカース『オール・アバウト・コーヒー』)
    • (1454/55 コーヒー利用がマッカ(メッカ)に伝わる?)(アブドゥル=カーディル『コーヒーの合法性の擁護』 エスコリアル修道院版のみ)
  • 1454-60 初代スルタン、アーミルI世(アーミル・アル=マリク・アッ=ザーフィル・イブン・ターヒル。ターヒル家の四男)の治世
  • 1460-1478 二代スルタン、アリー(アリー・アル=マリク・アル=ムジャーヒド・イブン・ターヒル。ターヒル家の長男)の治世
    • 1460-5 ザイド派への侵攻
    • (1457)-1474 フバイシー族の反乱
      • 1462-4 アル=フバイシーが再び反乱、鎮圧されて和平を結ぶ
      • 1465-74 アル=フバイシーの弟、イドリースが蜂起するが鎮圧される
      • 1478 イドリースが再び蜂起するが敗れ、逃れたアデンで殺される。
    • 1464 ターヒル家兄弟間のいざこざ
      • 1464 アブドゥル=マリク・イブン・ターヒル(ターヒル家の次男)がザビードの代官になるが、アリーにより解任される(楽器演奏を認めたため)
      • 1465 他の兄弟と不仲になったアリーが出奔
    • 1468-70 ティハーマ地方の諸部族の反乱。バニ=ハフィース族との大規模な戦争で勝利するが多くの兵を失う。
    • (1470 ザブハーニーが死亡)
    • 1474 アリーが病気となり、二人の甥が代理に
      • スルタン代理:ダウード・イブン・ターヒル(ターヒル家の三男)の息子、アブドゥル=ワッハーブ(後の三代スルタン)
      • ザビード総代:ユースフ・イブン・アーミル(ターヒル家の四男で初代スルタン、アーミルI世の息子の一人)
    • 1477 マッカ(メッカ)の領主、シャリーフ・ムハンマド・イブン・バラカートがジーザーンに侵攻。ジーザーン領主の息子がザビードに保護される。
    • 1478 アリーが病死。アブドゥル=ワッハーブが三代スルタンに任命される。

*1:Porter, Venetia (1992) The history and monuments of the Tahirid dynasty of the Yemen 858-923/1454-1517., Durham theses, Durham University. Available at Durham E-Theses Online: http://etheses.dur.ac.uk/1558/