エチオピア野生種/半野生種のポイント

……いかがだっただろうか?

実は、こういった説明を読んでみても、僕にも「よく判らない」というのが正直なところだ。個々のタイプの性質がばらばらなだけでなく、互いに入り交じっていて整理の付けようがない、という印象を受けるし、おそらくはその理解で正しいのだろう。ただ、以下の3つのポイントだけは挙げておきたい。

  1. エチオピアのコーヒーは「エチオピア野生種/半野生種(群)」という、非常に多種多様な集団である。
  2. 多少は地域ごとにタイプの違いはあるものの、基本的にエチオピアのコーヒー豆はこの多種多様な集団から収穫される。これがばらつきの大きさの一つの原因である。
  3. 1950年代以降の採集プロジェクトによって、各国にエチオピア由来のコーヒーノキがもたらされた。これらは後に整理され、それぞれが「栽培品種」として確立していった。


(3)については、ちょっとややこしいかもしれないが、(3)の栽培品種と、エチオピアに現在自生しているコーヒーノキや、当時自生していた(採集した)コーヒーノキと「同じ品種」であるとは、厳密には「言わない」。


例えば当時、エチオピアのある地区に数百本のコーヒーノキが自生しており、大まかに何種類のタイプに分けられそうだったとする。この場合、全ての樹からサンプルを持ち帰るのはそもそも不可能であり、それぞれのタイプからいくつか「代表」だけを選んで持ち帰ることになる。このとき、代表に選ばれたものと、選ばれなかったものが、厳密に「同じ」であるかどうかは判らないからだ。


今、エチオピアのコーヒーで有名どころとしては…まぁ、ハラーやイルガチェフだろうか? ハラーでは恐らく今も、S10-ハラールに似た特徴のコーヒーノキが主流だろう。イルガチェフは、地域的に見て、S8-タファリケラやS17-イルガレムあたりに近いものが主流だろうか…ただ、いずれも確立された品種として栽培されているわけではないので、単一地区で収穫されたものでも、性質の異なるものが(他産地で複数品種を混ぜて栽培している以上に)混ざってきやすい、ということになるわけだ。


一方、持ち帰ったサンプルについて各地でそれぞれ栽培に成功し、子孫を残していったとする。そしてその子孫が、元のサンプルと同じような特徴を示すのならば、基本的にそのサンプルと同じ「栽培品種」と見なすことが可能だ*1

*1:栽培品種の場合、その植物学的な特徴が遺伝的に受け継がれていかない場合でも、一応は一つの栽培品種として扱うことができる。また、子孫が異なる特徴を示した場合、親とは異なる栽培品種として扱うことも可能。「植物学的」にはそのくらい曖昧に扱われる一方で、品種名登録の問題が関わってくるのが、栽培品種の特徴。