イエメン栽培種

エチオピアが「アラビカコーヒーノキの故郷」ならば、イエメンは「コーヒーの故郷」である。

イエメンこそが、初めて今日のコーヒーという飲み物」が生まれた地であり、また人の手によるコーヒー栽培が最初に行われた地だと言っていいだろう。今日、世界に広まっているティピカやブルボンなど、主要なコーヒーの品種も、すべて元を辿ればイエメンで栽培されていたコーヒーノキが外に持ち出されたものだ…このあたりは以前書いた「出イエメン記」(http://d.hatena.ne.jp/coffee_tambe/20100514)も参照してほしい。


実はイエメンで栽培されているコーヒーの品種も、エチオピアと同様あるいはそれ以上に、非常につかみどころがない。ただ、その理由はエチオピアとは大きく異なる。

エチオピアのコーヒーは野生種や半野生種で構成され、遺伝的に極めて多種多様だったが、イエメンのコーヒーはすべて人為的に栽培されているものであり、遺伝子解析の結果から見ると非常に近縁のものだけから構成されている。これらのことからイエメンのコーヒーは、比較的近縁のものから成る、数種類の栽培品種が混在して栽培されているものだと考えられており、イエメン栽培種 (Yemeni cultivars/Yemen cultivars) と総称するのが、一般的だ。

たかだか数種類なのに、なぜイエメンのコーヒーには「つかみどころがない」のか。実は、イエメンのコーヒーは、十分なサンプルが収集されてるとは言いがたいからだ。この点が、既に数千種類のサンプルが世界各地にあるエチオピアのコーヒーとは対照的だ。