「アラビカ≒イヌ」論

品種の話が続いてるが、ここで一つ喩え話をしておこう。


最近、うちの近くに大型のショッピングモールやホームセンターができた。その中のいくつかにペットショップが入ってて、子犬や子猫なんかが並んでいる。うちの周りだけなのか、あるいは全国的なブームなのかは判らないけど、今はイヌの方が種類も数もたくさん並んでて、ネコよりも人気のようだ。

ケージを見るとチワワにトイプードルにポメラニアンに柴犬……実にたくさんの犬種があるものだ。中には「○○○○○スパニエル」とか、聞いた事もないような、何だか長い名前のものもいる。


これだけたくさんの種類があるイヌだが、動物学上はCanis lupus familiarisという、ただ一つの種として分類されている。小さなチワワも大きなセントバーナードも、みんなCanis lupus familiarisだ。

このことは、たくさんの品種があるアラビカ種が、植物学上はCoffea arabicaというただ一種に分類されているのとそっくりだ。


樹そのものや葉、コーヒー豆などの全てが巨大なマラゴジッペは、きっとセントバーナードみたいなものだろう。


逆にチワワに相当するのは、全体が小さなモカ(ブルボン変異種)か、ムルタ/ナナなどの矮性種か。


幹と枝だけが矮性化するカトゥーラは、さしずめ足だけ短いダックスフントウェルシュコーギー、と言ったところか……。


人の手によって、愛玩用、狩猟用などさまざまな目的で、いろいろな「犬種」が作られてきたように、コーヒー栽培でもさまざまな「品種」が作られてきた。これらの「コーヒーの品種」は基本的に「純系」を保つようにしたものが各国の農業試験所や研究所などに保存されている。そして、そこから、それぞれの農園に分与されて栽培されているものから、我々の目にするコーヒー豆が収穫されているわけだ。