実験結果メモ

目的:スイス工科大のEscherらの2008年の論文の結果について、ドラムロースターでも同じ結果が得られるかどうか。


方法:マイスター2.5kg釜を用いた少量焙煎系で、燃料ガス圧の調整(目盛り上0.9→1.1→1.3)により火力を上げることで、吸気温を上昇させた焙煎(以下、高温焙煎1.1,1.3)を行う(コロンビア産アラビカ)。豆投入時の温度や排気条件は、通常のものと同一とした。通常の条件での焙煎(以下、通常焙煎)と高温焙煎で同じ焙煎度に仕上げ、同一条件で抽出したものの香味が同じになるかどうかを検討した。


結果:高温焙煎の場合、通常焙煎に比べて焙煎は短時間に進行した。ただし、1ハゼ、2ハゼの時点および終了時の温度には違いがなかった。高温焙煎の方がハゼ音(特に1ハゼ)は大きく、また回数も大きかった。焼き上がった豆は通常と高温焙煎とでほとんど見分けがつかない程度に煎り止めし、色ムラなどにもほとんど差がなかった(高温焙煎の方が、ごくわずかに豆が大きく感じられないではなかったが)。また、粉砕した粉の色見にも差は認められなかったが、味には明確な違いが生じた。高温焙煎1.1では酸味が強く、高温焙煎1.3では味が全体的に弱く、十分な味物質の生成が進行していないことが示唆された。


結論:「同じ機械で同じ豆を同じ見た目(焙煎度)に仕上げても、火力が変われば焙煎結果は変わる」「見た目が同じだからって、同じ味とは限らない」…半熱風式ドラムロースターでもEscherらが熱風式フルードベッド(LTLT, HTST, "profile"の各条件)で出したのと、とりあえずは似たような結論となった。


おまけ:マイスター2.5kg釜で、火力を上げて排気を強く回しながら焙煎することで、LTLT〜HTSTに相当するようなFast roastingと同様の結果が得られることも判った。つまり、(1)大きくハゼて、(2)豆もきれいに大きく膨らみ、(3)抽出される成分の量が増加し、(4)油のまわりが早くなる、傾向がある豆になった。半熱風式でも温度や排気のコントロールがきっちり出来るなら、中小規模自家焙煎店向けの機体でも、ここまでのことができるというのは正直驚きというか…以前から、マイスターは「熱風式」を名乗っていいくらいなんじゃないかと思ってたのだけど、それが裏付けられたような気分だったり。


謝辞:貴重な体験をさせていただきたバッハコーヒーの方々、特に丸一日(以上)実験にお付き合いいただいた中川さんに深謝します。



……メモのはずなんだが、何だか論文風の文章になるのは仕様です。