パナマコーヒーのこれから

現在のパナマ・ボケテ区のコーヒー生産は、他の生産国と比べると、今のところ、高品質高価格化に成功している例だと思われる。だがその将来に不安がないわけではない。近年、ボケテ区は観光地として開発され、たくさんのアメリカ、カナダ、ヨーロッパ人の退職者が移住を希望しており、コーヒー生産以外でも経済的な活況をおさめている。この移住ラッシュが将来、ボケテの人々をどう変化させ、またコーヒー生産をどう変化させていくのかは不透明だ。それに伴って、自分自身は農園での作業経験がないオーナーが、高額落札を繰り返す農園を買収するなどといった、投機的な動きも加速して行くかもしれない。だがその一方で、セラシン家のドンパチ農園のように、100年以上にわたって一家で受け継いで来た農園が、今後も存続していく可能性も十分に感じさせてくれる。


パナマではずっと、新しい取り組みとともに、古くから受け継がれてきたものが共存しており、ゲイシャの樹やナチュラル精製などの古いものの中から「再発見」が、時代を進めてきた。今後のパナマがまたどういう変革を起こしていくのか、期待して見守りたい国の一つである。

謝辞

本論考をまとめるにあたり、パナマのコーヒーに実際に触れる機会をいただきパナマの農園事情や国際取引に関する情報を教えていただくとともに、実りあるディスカッションをして下さった、カフェバッハの田口護氏と中川文彦氏、辻静雄料理教育研究所の山内秀文氏に感謝します。