さび病以前のブラジルの品種選択

#以前(http://d.hatena.ne.jp/coffee_tambe/20100114)紹介した、ポルトガル語総説に関連して。


そもそも(ブラジル・カンピナス農業試験所の研究者、Carvalhoも自身で述べているように)コーヒーは遺伝学や育種の研究に不向きな植物である。何よりも、種を播いてから次の世代(種子)が得られるまで4年ほどかかる、というのが、いちばんのネックだ。ある品種とある品種を掛け合わせて、合の子を作ろうとしても、その結果がわかるのは上手く行って4年後。上手くいかなかったとしても、その後からやり直すのではあまりに時間がかかりすぎる。したがって自然と、一度に試しておいてみる(そして、無駄に終わるかもしれない)交配実験の数も増える。まさに手間と時間ばかりがかかる仕事になる。


だがブラジルは、その地味な研究を50年以上、愚直に続けた。だからこそ言おう…「ブラジルこそが最も真剣にコーヒーを研究した国である」と。


ブラジルで発見あるいは新しく作出された品種は数多い。このため、その全容を理解することは難しい。だがブラジルの農園で実際に栽培された品種の選択原理は、いたってシンプルだ……「収穫性の重視」、これに尽きると言ってよい。むしろ、他の余計な要素を考えない方が、ブラジルではなぜ他の国と違う品種が選ばれる傾向にあったかを容易に理解することができる。