ヘルスカナダ(カナダ健康省)が、カナダ人にカフェイン摂取量を(自己)管理するように指摘

食品安全情報Blog経由

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20100323#p7

まぁ細かな数値はともかく、こういう流れは出てきてもおかしくないからなぁ、というのが正直なところ。この判断自体を是とするか非とするかは、「カフェイン依存」という状態を、(1)どこから、(2)どの程度、「不健康な」状態と位置づけるか(あるいは問題ないものと考えるか)、という観点によるので、私個人はこの基準や指摘自体を「まるっきりナンセンスで不当なもの」とは思わないです。

#逆に「ナンセンスで不当なものだ」と声高に主張する人がいたら、いくらその主張が、自分にとって心地よく、都合よく、魅力的であったとしても、その主張はほとんど信用するべきではない、と釘を刺しとく。
#ただし、あくまで「カナダ健康省のような判断をする人がいてもいいだろう」というだけなので、その判断を支持することもしないけど。


ただまぁ、子供や妊婦に対する注意を喚起している部分については、カナダの判断は評価したい……つーか、まぁ僕自身、5年くらい前にコーヒー検定用の教本に寄稿した文章に同じようなこと書いてるし(http://sites.google.com/site/coffeetambe/coffeescience/medicalscience/coffeeandhealth/guideline)。当時「世間の動きを5年くらい先取りした内容だなぁ」とか思いながら書いてた(http://slashdot.jp/comments.pl?sid=371533&cid=1207062)のが、まさに的中したとも言えるので。


成人の推奨値については、QOL低下につながりうるカフェイン禁断頭痛と、QOL上昇につながるカフェイン摂取による精神的ストレス軽減の効果など、諸々の事情を合わせた上で、各自が自己判断すればいいだろう、というのが正直なところ(この辺は、そのうちSCAJのテキストに掲載されるだろうと思うけど)。


ついでなんで、今のうちにもう一つ予言しといてみよう ^^;

恐らく、ここ2-3年くらいのうちに(もっと早いかもしれんけど)カフェインが認知症(特にアルツハイマー認知症)のリスクを低減する、という研究が一層進展して、ニュースなんかに取り上げられる機会も増えてくるだろうと思います……で、まぁ実際に研究が進んでいくと、そういった効果はある、という結果が出てくるだろうと『予想』してるので、個人的には現時点で「カフェインを摂取することに及び腰になる」風潮が植え付けられるのは、(国家レベルの健康対策としては)あまり良くないだろう、とも思ってたりします…要は「禁断頭痛が出ない程度で、適量を摂り続けるのが(国家レベルでは)理想的になるだろう」ということで。


#まぁあくまで『予想』なんで、現時点で「根拠を出せ」と言われても困るのだけど、
#それこそ「世間の動きを数年先取りしてる」と思ってたのと同じような「研究者としての勘」とでも言うか
#……まぁ敢えて言えば、パーキンソン病に対するカフェインの防御作用とか、
#カフェインによる神経細胞死の防御作用とか、アデノシン受容体への作用とかの、
#(現時点ではまだ「根拠」とは呼べないレベルの)in vitro/in vivoの実験データ群から
#「何となく」予想してる部分なんですが。


さらにもう一つ予言を付け加えておくと、「コーヒーと健康」の話はいずれまた「コーヒーとデカフェ」の対立になっていく可能性が高い……とは言っても、多分5年か、もう少し先の話…コーヒーと糖尿病リスク低下の関係が一般に受け入れられ、さらに total risk の概念が取り沙汰されるようになってから、それから後の話なので。そしてその流れでも、結局はカフェインが悪玉扱いされる風潮が出てくるだろう、と。


その時になって「カフェインが悪者でない」ということを主張するためには、パーキンソン病アルツハイマーのリスク低下よりも、むしろ「カフェインによる精神的ストレスの軽減」という部分が重要なキーワードになるでしょう。もし疫学研究者で、これからコーヒーやカフェインについての調査を考えている人がいるなら、mental stressをconfounding factorの一つに加えて調査していくことをお薦め(というより、お願いだな ^^;)しておきます……10年後くらいの被引用回数が少し増える効果くらいなら多分あるでしょうし……尤も、mental stressを「どう尺度評価するか」が、いちばん難しいところだと思いますが。