ふるへっへんど(5)

Chocolaty- Bakers, Dark chocolate, Swiss (/Dutch *1 )

訳語:チョコレート系:ベイカーズチョコレート、ダークチョコレート、スイスチョコレート(ミルクチョコレート) (/ダッチチョコレート)


多分、これまで訳されてきた中では誤訳が多かった箇所だと思われます。Bakerを「パン焼きの」、Swissを「スイスの(??)」と(そして、Dutchを「オランダの(???)」と)、そのまま訳してるテキストも見受けられますが、これらはいずれも「チョコレート」のタイプを示す言葉です。


#実を言うと「多分、チョコレートの種類だよなぁ」と思いながらも、他の人たちがそう訳してなかったのもあって、ちょっと確信を持ってませんでした。
#そこで、この好機に、と、SCAA側に質問してチョコレートの種類で間違いなかったことを確証しました(役得? ^^;


で、問題はそれぞれが「チョコレートの中で、どんなタイプなのか?」なのですが、何せチョコレートについての知識がなかったので、文献漁ったり、親戚のケーキ屋さんを質問攻めにしたりなどして、大体の感じを把握した上で、さらにSCAA側に追加質問するなどして、確認を取ってます。


日本の製菓用語上では、チョコレートの分類としては、カカオ分(カカオマスカカオバター)の割合によって「クーベルチュール」と呼ばれるものがあったり、細かく分かれてるそうですが、SCAAのTed Lingleによるとここの分類はもっと大雑把なもので、「ミルク分が多いスイスチョコレート」と「それ以外」に大別され、「ベイカーズ、ダーク、ダッチは非常に似ており、いずれも、アルカリ処理で作られたダークチョコレート*2に対する別名として使われる」ということでした。


チョコレート開発技術の歴史を見ると、(1)オランダのヴァン・ホーテンが、カカオ豆をアルカリ処理してココアパウダーを製造する方法を発明(1828)、(2)イギリスのJSフライ・アンド・サンズ社が固形のチョコレートを発明(1847)、(3)スイスのダニエル・ペーターがミルクチョコレートを発明(1875)、(4)スイスのリンツ社がコンチング法を発明(1879)、というのが「4大発明」とされているようです。

「アルカリ処理で作られたダークチョコレート」とは、すなわちヴァン・ホーテンが開発したココア製造技術のことを意味しています。現在、高級チョコレートの代名詞の一つになってる「ベルギーチョコレート」が、おそらくこのタイプの正当な後継だと考えられるのではないかと思っています。


またこれとは別途に、アメリカでは18世紀に設立されたベイカーズ社がチョコレートの輸入販売、製菓用などの業務用チョコレートの製造販売を手がけ、その後、一般向けのチョコレートも販売するようになり、20世紀までには「アメリカの一大老舗プランド」の地位を確立しました。そういった意味で、SCAAの、つまりアメリカの人々にとっては、"Bakers"はチョコレートの味を伝えるのには最も身近な表現のようです。


…ひょっとしたら「ダークチョコレート」と「ベイカーズ」に、微妙なニュアンスの違い*3があるのかも?とも思ったのですが、少なくともTedからの回答では、そういう細かい違いがあって分けられているというわけではなさそうでした…。

*1:"Dutch"は、Sweetmarias版のホイールに見られる

*2:ミルクが入っていなければ、砂糖が入っていて(sweet)も、いなくて(unsweet)も「ダーク」と呼ばれるそうです。

*3:アルカリ処理の有無や、砂糖の有無など