ピンクブルボン

石脇@石光さん(http://www.qualityofcoffee.com/column/post_510.html)経由、Mi-Cafeto(http://www.mi-cafeto.com/pink-bourbon/)より


「コーヒーハンター」川島さんの、Mi-Cafetoからピンクブルボンが出るそうです。\4,725/300gだそうな。他の「最高品質」グレードのやつは、さすがにおいそれと手が出せる値段/量ではないけど、これくらいなら、まぁ何とかなるという値段かな…ちょっとした店のブルーマウンテンやハワイコナとそんなに変わらないし。


しかしエルサルバドルにも、いろんなコーヒーがあるもんだなぁ…まぁ研究所があったから(商業ベースではなくても)ある意味、当たり前なのかもしれないけど。


ピンクブルボンは、ハワイの研究所(ブラジルから、いろんなブルボン変異種が持ち込まれた)から出てる論文で名前を見た事がある程度です…後は、ネットで"pink bourbon"ないし"orange bourbon"と呼ばれるものについて言及してる人を、ちらほら見かける程度。


まぁ「亜種」とは言ってるけど、植物学的分類上では、もちろん厳密な意味での亜種(subspecies)や変種(variety)ではないです(つーか現在、植物学上は、アラビカC. arabicaはすべて一つにまとめられてるので)…が、この辺りはあんまり細かく指摘しても仕方ないしねぇ…とりあえず栽培品種(cultivar, cv.)ってしとけば、まぁ外れがないのだけど。


ただまぁ、Pink bourbonについてはcv.として固定されてるか、という点でも少し疑問があったりして。ハワイの研究所の資料でもアクセションNo.(HAES)が振られてないし。AFLP解析では、Bourbon Vermelho (Red Bourbon)との相同性が高いし、表現型から見ると、実はRed Bourbon X Yellow BourbonのF1で、xanthocarpa遺伝子がヘテロ(Xcxc)になってる中間雑種とかじゃないのかなぁ? とか思ってみたり。

#Xcは不完全優性で、XcXcが濃い赤(Red cherry)xcxcが黄色、Xcxcは明るい赤とされる。ついでに、発現が不安定でF1植物では黄色〜赤のタイプの実もつくそうな。


何にせよ、ブラジルで90年代に出た品種の古典的遺伝学についての詳細な論文の中には、Bourbon rosado (pink bourbon)の記載がなく、ハワイの資料でもアクセションNoが振られてない、という状況なわけで。可能性としては、(1) Red bourbonとyellow bourbon(か、その他の黄色実品種)のF1、(2)ブラジルから渡ったブルボンからハワイとエルサルバドルのそれぞれで別途に出現した変異型、(3)あるいはブラジルで出現した変異型がハワイとエルサルバドルにそれぞれ渡ったもの、あたりが考えられるところなんだろうけど。


ハワイの資料では収量は半分とまではいかないものの、他のブルボンよりも低いし、やっぱりエルサルバドルのものと似てる印象もあります。また、AFLPの結果などから考えても、(ロブスタとのハイブリッドはもとより)CaturraやCatuaiなどよりも古い、「昔のブルボン」のタイプに近く、かつ一本あたりの収穫量が少なくなることあたりが、川島さんがいう「品質の高さ」につながってるのかなぁ、とか思ってみたり。