「二人のナピアー」あるいは、All about coffeeの間違い?

http://ja.wikipedia.org/wiki/ノート:コーヒーサイフォン
ウィキペディアの「コーヒーサイフォン」は、以前僕も執筆に加わった項目なのだけど、ここで興味深い指摘があったのでちょっと調べてみてるところ。
日本のコーヒー関連書籍では、そもそもサイフォンは「イギリスのロバート・ナピアーが1840年に考案したもの」と記載されてるのがほとんどなのだけど、これが調べてみると、もっと奥が深かったりします。

  • そもそも今使われてる「コーヒーサイフォン」(double glass balloonタイプ)は、ナピアー以前にヨーロッパで考案されていた。
  • ナピアーの考案したタイプと、現在のコーヒーサイフォンは全く構造が異なる。
  • 「ナピアー」というカタカナ表記が用いられてるけど、"Robert Napier"がイギリス人であることを考えると、「ネイピア」の方がしっくり来る
  • というか、実は「ロバート・ナピアー」は二人いる。Robert Napier (1791-1876)と、その息子、James Robert Napier (1821-1879)。で、ユーカースの"All about coffee"では父親の"Robert Napier"を考案者としているけど(p.629)、「息子の方だ」と、彼らの子孫が発言してたり、ブリタニカ第10版に記載されてたりする。

総合的に考えると、どうやら"All about coffee"の記載の方が間違ってそうな感じだけど、もうちょっときちんとした資料がないと断定はできなそうな感じ。何より、ナピアー自身がこの器具でパテント取ってないそうなので、直接的な記録に乏しそうなのが厄介なところだったり。とりあえず、日本のコーヒー本だと、この辺りは"All about coffee"の受け売りばっかりだろうし、もう少し洋書を入手して調べてみないと厳しそうな感じがする。

やっぱりサイフォンの歴史は奥が深いというか、ややこしいというか…。

以下は参考URL
"Vacuum Coffee Pot" http://baharris.org/coffee/History.htm
"Napier Coffee Maker":ナピアーの子孫が書いたらしき文章 http://www.technotoad.com/the-napier-vacuum-coffee-maker.php
"Coffee":Britanica 10th(1902) http://www.1902encyclopedia.com/C/COF/coffee.html
"James R Napier" http://gdl.cdlr.strath.ac.uk/mlemen/mlemen068.htm
"Robert Napier" http://gdl.cdlr.strath.ac.uk/mlemen/mlemen069.htm