コーヒーと癌についての総説@Cancer Letters

http://pt.imaginet.ne.jp/~tambe/cgi-bin/research/research.cgi
↑に集めてる論文リストに入れようかとも思ったのだけど、こっちで。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18834663
コーヒーと癌について新しい総説が一報、Cancer Lettersのオンライン版に出ているようなので、拾ってざっと読んでみたのだけど…いやいや、いくら何でも、こりゃあいかんでしょう。

ここ数年、コーヒーと癌の関係については見直されてきてて、コーヒー飲用者では一部の癌の発生リスクが減ることや、従来「リスクが上昇する」と言われていた一部の癌については関係が否定されてきたりしてます。こういうことをこの総説でも紹介してるわけなんだけど…いくら何でも、膀胱がん(bladder cancer)について全く触れないとは。「コーヒー=有益」側にバイアス掛かりすぎでしょう。こんな総説、よくreviewerが通したよなぁ。

「コーヒーを飲むと癌になりやすくなる」というのは、一昔前から言われてきたことなんだけど、この二十年くらいでようやくそれが疫学的にきちんと検証され、その見解のほとんどが誤りであったことが判ってきつつあります。その中で、未だに白黒はっきり付いてないというか、グレー扱いされてるのが膀胱がんとの関係。最近は、通常飲む量では影響がない、という報告も増えつつあるんだけど、これがグレーになっているせいで、IARC(国際がん研究機関)の発癌リストの2B(可能性がある)というグループに「コーヒー」が入れられてるという背景があるわけで。他の癌と無関係であることが明らかになってきた今、膀胱がんとの関係についても飲用量などを含めた、より詳細な解析が重要になってきてます。

…まぁ、とは言っても、「膀胱がんのリスクが上がるけど、代わりに肝がん、大腸がんのリスクが下がり、糖尿病やパーキンソン病の発症リスクも低下し……」という風に、トータルで考えると有益面の方が大きいだろう、という判断にはなるんですけどね。特に、今年に入って出たコホートでも総死亡率の低下が報告されてるし、実は日本でもJACC study文科省科研費による大規模コホート)で同じような結果が報告されてるので。